ボルダリングを続けていると「シューズのかかとが余る」という悩みに直面することがよくあります。せっかくお気に入りのデザインのシューズを買ったのに、ヒールフックをしようとするとかかとがズレてしまったり、中にか空気が入ってパカパカしたりすると、登りに集中できませんよね。
実は、ボルダリングシューズのかかとが余る原因は、単なるサイズ選びのミスだけではありません。足の形とシューズの形状の相性や、モデルごとの設計の違いなど、さまざまな要素が関係しています。この記事では、かかとが余る理由から、今すぐ試せる対策、そして自分にぴったりの一足を見つけるためのポイントをやさしく解説します。
かかとのフィット感は、ボルダリングの上達に欠かせない重要な要素です。自分の足にしっかり馴染むシューズを手に入れて、より高いグレードの課題に挑戦できるようになりましょう。
ボルダリングシューズのかかとが余る主な原因とは?

ボルダリングシューズのかかとが余るという問題は、多くのクライマーが経験する悩みの一つです。なぜしっかり選んだはずなのに隙間ができてしまうのでしょうか。まずはその根本的な原因を整理してみましょう。
シューズの足型(ラスト)と自分の足が合っていない
ボルダリングシューズには、メーカーやモデルごとに「ラスト」と呼ばれる木型が存在します。この木型が自分の足の形と一致していないと、どこかに隙間が生じてしまいます。特にかかと部分は、シューズによってボリュームや深さが大きく異なる箇所です。
例えば、欧米のメーカーは日本人に比べてかかとが大きく、丸みのある形状を想定して設計されていることがあります。一方で、日本人はかかとが小さく直線的な傾向があるため、海外モデルを履くとかかとが余るという現象が起きやすいのです。これはサイズの問題というよりも、根本的な形状のミスマッチと言えるでしょう。
最近では「LV(ローボリューム)」モデルという、かかとや甲の部分を小さく設計したラインナップも増えています。もし標準的なモデルでかかとが余る場合は、こうした足型自体の相性を疑ってみる必要があります。
シューズの剛性が高く、かかとを押し込めていない
新品のシューズや、全体的に剛性(硬さ)が強いモデルを選んだ場合、足がシューズの奥までしっかり入りきっていないことがあります。ボルダリングシューズの底には「ランド」と呼ばれる強力なラバーが巻かれており、これによって足が前方に押し出される構造になっています。
シューズが硬すぎると、足の力がランドの張力に負けてしまい、かかとの一番深い部分まで足が届きません。その結果、かかとの底部分に空間が残ってしまい、パカパカとした感覚が生まれます。この場合は、シューズを履き慣らしてソールを柔らかくすることで解消されることもあります。
特にダウントゥ(つま先が下を向いた形状)が強いモデルは、足を入れる際にかかとをグッと押し込む必要があります。履くときにヒールタブをしっかりと引っ張り、かかとを適切な位置に収める意識を持つだけでも、余り具合が変わってくるはずです。
サイズ選びで「攻めすぎ」または「妥協」をしている
ボルダリングシューズ選びで難しいのがサイズ感です。つま先を曲げて履くのが基本ですが、つま先の痛みばかりを気にして大きめのサイズを選んでしまうと、当然ながらかかと周りに余裕ができてしまいます。これは初心者に多い失敗の一つです。
反対に、サイズを小さくしすぎて「攻めすぎる」場合も、かかとが余ることがあります。足が窮屈になりすぎてシューズの中で足が曲がりすぎ、かかとのカップの中に正しく収まらなくなる現象です。これを「かかとが浮く」と表現することもあります。
適切なサイズとは、つま先が軽く曲がった状態で、かかとからつま先まで隙間なく密着している状態を指します。かかとが余る場合は、ワンサイズ下げるか、あるいはメーカー自体を変更して自分に合うサイズ感を再確認する必要があるかもしれません。
かかとが余ることで発生する登りへの悪影響

「少しくらいかかとが余っていても、つま先で立てれば大丈夫」と思っていませんか。実は、ボルダリングシューズのかかとの隙間は、パフォーマンスを著しく低下させる原因になります。どのようなリスクがあるのか具体的に見ていきましょう。
ヒールフックの精度と安定感が大幅に低下する
ボルダリングのテクニックにおいて、かかとをホールドに引っ掛ける「ヒールフック」は非常に重要です。しかし、シューズのかかとが余っていると、ホールドに体重をかけた瞬間にシューズの中で足がズレてしまいます。これでは正確なコントロールができません。
特に強傾斜の壁では、ヒールフック一点に大きな負荷がかかります。シューズがズレると力が逃げてしまうだけでなく、最悪の場合はシューズが脱げてしまうこともあります。信頼できないヒールフックは、ダイナミックな動きを制限し、結果として完登を妨げる要因となるのです。
ヒールフックを多用する課題であればあるほど、かかとのフィット感は死活問題となります。パカパカする隙間がある状態では、どんなに強力なラバーが使われていても、その性能を100%引き出すことは不可能と言えるでしょう。
つま先への力の伝達が効率よく行えなくなる
ボルダリングシューズは、かかとから土踏まず、そしてつま先へと力が一本の線のように伝わるように設計されています。かかとがしっかりホールドされていることで、初めてつま先に体重を乗せたときにシューズ全体が安定します。
もし、かかとが余っていると、シューズ全体のテンションが緩んでしまいます。これにより、小さなホールドに乗った際につま先が負けてしまい、足が弾かれやすくなるのです。特に、かかとを押し出すようにして立ち上がる動作において、隙間があるとその分だけ力のロスが生じます。
シューズの一体感がない状態では、足裏感覚も鈍くなります。繊細な足使いが求められるスラブ(緩やかな傾斜)の課題などでも、かかとの緩みが原因で微妙なバランスを崩してしまうことがあるため注意が必要です。
足の疲労や痛みの原因になることがある
かかとが余っているシューズを無理に履き続けると、足に余計な力が入ってしまいます。シューズの中で足が動かないように無意識に踏ん張ってしまうため、足の裏の筋肉やふくらはぎが疲れやすくなるのです。これは長時間のクライミングにおいて大きなデメリットです。
また、シューズの中で足が滑ることで、摩擦による靴擦れが起きやすくなります。特にかかと周りは皮膚が薄い部分もあるため、隙間があることで擦れてしまい、痛みを伴うケースも少なくありません。本来、守られるべき足がシューズによって傷つくのは避けたい事態です。
適切なフィット感があれば、足はリラックスした状態でシューズの性能を享受できます。余計なストレスを減らすためにも、かかとの隙間を放置せず、しっかりと対策を講じることが上達への近道となります。
今すぐできる!かかとが余るシューズの対策方法

すでに購入したシューズのかかとが余ってしまっている場合、買い換える以外にもいくつかの対策方法があります。少し工夫するだけでフィット感が劇的に改善することもあるので、ぜひ試してみてください。
ソックスの厚みを調整して隙間を埋める
最も手軽で効果的な方法が、ソックス(靴下)による調整です。最近はボルダリング専用の薄手ソックスが主流ですが、あえて少しかかとの作りがしっかりしたソックスを選ぶことで、余った隙間を埋めることができます。
特におすすめなのが、かかと部分に滑り止めがついているソックスです。これにより、シューズ内での足のズレを最小限に抑えることができます。また、かかとだけを厚手にしたハイブリッドな構造のソックスも市販されており、つま先の感覚を損なわずにヒール周りのフィット感を高めることが可能です。
ただし、厚手のソックスを履くと足裏感覚が鈍くなるというデメリットもあります。まずは薄手の専用ソックスの中で、自分に合うブランドを探してみることから始めましょう。微妙な厚みの違いが、かかとのパカパカを解消する決め手になるかもしれません。
ベルクロや紐の締め方を工夫して固定力を高める
シューズの締め方ひとつで、かかとの収まりは大きく変わります。ベルクロ(マジックテープ)タイプのシューズであれば、一度すべてのストラップを外し、かかとをしっかりとカップに押し付けてから、足首に近い方のストラップを強めに締め込んでみてください。
レースアップ(紐)タイプのシューズであれば、さらに細かい調整が可能です。足の甲の中央部分よりも、足首に近い部分の紐を意識して引き締めることで、かかとが前方に押し出され、余りが解消されやすくなります。紐を交差させる方法を工夫する「ヒールロック」という結び方もあります。
シューズを履く際は、ただ足を突っ込むだけでなく、床にかかとを軽くトントンと打ち付けて、かかと側に足を寄せてから固定するのがコツです。この一手間を加えるだけで、登り始めのフィット感が格段に向上します。
市販のヒールパッドやテーピングを活用する
物理的に隙間が大きすぎる場合は、市販のケアアイテムを活用するのも一つの手です。靴擦れ防止用のジェルパッドや、100円ショップなどで手に入るかかと用パッドをシューズの内側に貼り付けることで、隙間を直接埋めることができます。
また、登る前に自分のかかとにテーピングを巻くのも効果的です。アキレス腱に沿って縦に貼ったり、かかと全体を包むように貼ったりすることで、足のボリュームをわずかに増やし、シューズとの密着度を高められます。テーピングは表面が滑りにくいため、シューズの中でのズレ防止にも役立ちます。
これらの方法はあくまで応急処置ではありますが、お気に入りのシューズを最後まで使い切りたい場合には有効な手段です。自分なりにカスタムして、最適な履き心地を探ってみるのもボルダリングの楽しみの一つと言えるでしょう。
かかとが余る対策として「ヒールカップの中に新聞紙を詰める」といった方法を耳にすることもありますが、これは足裏感覚を著しく損なうためあまりおすすめしません。まずはソックスや締め方の工夫から試してみましょう。
かかとが細い人におすすめのシューズ選びのポイント

「どのシューズを履いてもかかとが余ってしまう」という方は、もともと足のボリュームが少ない(細い)タイプかもしれません。そのような方が選ぶべきシューズの条件や、おすすめのモデルの特徴を解説します。
「LV(ローボリューム)」モデルを積極的に選ぶ
最近のボルダリングシューズ選びにおいて欠かせないキーワードが「LV(ローボリューム)」です。これは、標準モデルよりも全体のボリュームを抑え、特にかかと周りをスリムに設計したモデルのことを指します。
女性用モデル(ウィメンズモデル)として展開されていることが多いですが、最近では「性別を問わず、足の細い人のためのモデル」として、男性がLVモデルを履くことも一般的になっています。かかとが小さめに作られているため、標準モデルで感じていた隙間が嘘のように解消されることがあります。
LVモデルは、かかとのカップが浅めに設計されていることも多いため、くるぶしにシューズの縁が当たって痛いという悩みも同時に解決してくれる場合があります。まずは有名メーカーのLVラインを片っ端から試着してみることを強くおすすめします。
メーカーごとのヒール形状の特徴を把握する
メーカーによって、かかとの設計思想には明確な違いがあります。例えば、スポルティバ(La Sportiva)の「Sヒール」は、ヒール中央に硬いラバーを配置することで、横方向へのズレを抑えつつ高い剛性を発揮します。これはかかとが細い人でも安定感を得やすい構造です。
一方、スカルパ(SCARPA)のシューズは、日本人の足型に近いと言われることもありますが、モデルによってかかとのボリュームがかなり異なります。ドラゴやキメラといった柔らかいモデルは、足の形に合わせてラバーが追従しやすいため、多少の形状の差をカバーしてくれることがあります。
アンパラレル(Unparallel)などは、ヒールのフィット感に定評があるモデルが多く、かかとが余りにくい絶妙なカップ形状を採用しています。自分の好みの硬さだけでなく、「かかとの収まり具合」をメーカー選びの最優先事項に据えてみましょう。
スリングショットのテンションが強いモデルを試す
ボルダリングシューズの性能を支える「スリングショット」とは、かかとから土踏まずを通り、つま先へと繋がっているラバーの帯のことです。このスリングショットのテンションが強いモデルは、足を前方に強く押し込む力が働きます。
この押し込む力が強いと、かかとがシューズの後方に残りにくくなり、隙間ができにくくなります。いわゆる「ヒールテンションが強い」シューズを選ぶことで、かかと全体の密着感を高めることが可能です。
ただし、テンションが強すぎるとアキレス腱に負担がかかったり、長時間履くのが辛くなったりすることもあります。フィット感と快適性のバランスを見極めることが大切です。試着の際は、かかとが前方に押し出されている感覚があるかどうかをチェックしてみてください。
かかとが余りにくい注目モデルの例
・スポルティバ:ソリューションコンプ(LV設定あり)
・スカルパ:ドラゴLV
・アンパラレル:フラッグシップLV
・ファイブテン:ハイアングル(LV設定あり)
失敗しないための正しい試着と確認方法

新しいシューズを購入する際、かかとが余るかどうかを判断するには試着がすべてです。店舗でチェックすべき具体的なポイントを知っておけば、購入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。
つま先だけでなく「かかとの浮き」を徹底的に確認する
試着の際、多くの人はつま先の痛みばかりを気にしがちです。しかし、まずはかかとが一番奥まで入っているかを確認してください。シューズを履いた状態で、かかとを床に強く押し当ててみます。
このとき、かかとの底やサイドにブカブカとした感触がないか、空気が入って「ペコッ」と音がしないかをチェックします。もしわずかでも隙間を感じるなら、そのシューズは登っているうちにさらに馴染んで(伸びて)隙間が大きくなる可能性が高いです。
また、立った状態でつま先立ちをしてみてください。つま先立ちをした際にかかとのカップが脱げそうになったり、アキレス腱との間に大きな隙間ができたりする場合は、そのシューズのラスト(足型)が合っていないサインです。
店舗にあるホールドで実際にヒールフックを試す
ほとんどのクライミングショップには、試し履き用の小さな壁やホールドが設置されています。ただ歩き回るだけでなく、実際にヒールフックの動作をしてみることが非常に重要です。
ホールドにかかとを乗せて、自分の方へ引き寄せるように荷重をかけてみてください。このときにシューズの中でかかとがズルリと動く感覚があれば、そのモデルは避けたほうが無難です。理想は、かかととシューズが完全に一体化し、ダイレクトに力がホールドに伝わる状態です。
もし可能であれば、強傾斜を想定して高い位置にヒールをかける動きも試してみましょう。足首の角度を変えてもフィット感が持続するかどうかを確認することで、実際のジムでのパフォーマンスを予測できます。
時間をかけて左右両方の足をチェックする
人間の足は左右で微妙に大きさが異なります。右足はぴったりなのに、左足はかかとが余るということも珍しくありません。必ず両足を履いて、それぞれに隙間がないかを入念に確かめてください。
また、夕方になると足がむくんで大きくなるため、試着する時間帯によっても感覚が変わります。できれば、普段自分がジムに行く時間帯に近いタイミングで試着するのがベストです。焦って数分で決めるのではなく、10分程度は履き続けて足への馴染み具合を確認しましょう。
店員さんに自分の足の悩み(かかとが余りやすいこと)を伝えれば、専門的な視点から「このモデルはヒールが深めですよ」といったアドバイスをもらえます。プロの意見も参考にしながら、納得のいく一足を見極めてください。
| チェック項目 | 良好な状態 | 注意が必要な状態 |
|---|---|---|
| かかとの底 | 隙間なく密着している | 押すと凹む、空気感がある |
| ヒールフック時 | シューズがズレない | 中で足が滑る、脱げそう |
| つま先立ち | かかとがしっかりついてくる | かかとが浮いて隙間ができる |
| くるぶし周り | 干渉せず包まれている | 縁が当たって痛い、ガバガバ |
ボルダリングシューズのかかとが余る悩みを解消するまとめ
ボルダリングシューズのかかとが余るという問題は、登りの質を左右する重要な課題です。原因は、足型とのミスマッチやサイズ選び、シューズの剛性など多岐にわたりますが、どれも適切な知識と対策があれば解消できます。
まずは、今持っているシューズであれば、ソックスの調整や締め方の工夫、テーピングなどの応急処置を試してみてください。これだけでもヒールフックの安定感が向上し、次のステップへの足がかりになります。
そして、次にシューズを新調する際は、今回の記事で紹介した「LVモデル」の選択や、かかとの形状を重視した試着方法を実践しましょう。特にかかとをホールドにかけた際の密着感は、妥協せずに確認すべきポイントです。
自分の足に完璧にフィットするかかとを手に入れれば、これまで苦手だったヒールフックが得意な武器に変わるかもしれません。隙間のない理想のシューズとともに、ボルダリングの世界をもっと自由に、もっと力強く楽しんでくださいね。



